「生産性向上」の予備知識

生産性向上の意識付けや具体例に入る前に、まずはそれぞれ使われている言葉の整理をしておきたいと思います。

  1. 生産性とは
  2. 生産性を上げるとは
  3. 付加価値額とは

予備知識1:生産性とは

「生産性」とは、インプット(投入量)に対するアウトプット(産出量)の割合です。

 

労力や資本額 × 生産性 =価値額や産出量

 

さて、一般的な意味とは別に、企業活動で生産性という場合は、以下の2つがよく使われます。

 

・資本生産性:投入量を資本や有形固定資産など財貨でとらえたもの

・労働生産性:投入量を従業員数や労働時間など労力としてとらえたもの

 

公益財団法人 日本生産性本部による用法 なども含め、通常は単体で「生産性」という場合は、後者の「労働生産性」を指します。

 

予備知識2:生産性を上げるとは

「生産性を上げる」とは、より少ない労力で高い成果を得ることを指します。

つまり、同じ成果ならば少ない従業員数・労働時間で、同じ従業員数・労働時間ならばより高い成果を上げる取組を行うことを意味します。

 

予備知識3:付加価値額とは

企業活動の労働生産性において取り扱う成果とは「付加価値額」を指します。

計算上は

「営業利益+人件費+減価償却費」

※中小企業の新たな事業活動の促進に関する基本方針より

として取り扱います。

 

企業がお客様に提供する商品やサービスなどの価値(提供価値)には、外部から調達した仕入品や原材料、水道光熱エネルギー等(外部調達費)と、それらを活用して企業自身が生み出した価値(付加価値)があります。

 

提供価値(売上高) 付加価値(企業がその活動で生み出した価値)
外部調達費(社外で生産された価値)

 

営業利益とは、売上総利益(粗利益)から外部に対する諸費用を差し引いたものですが、人件費はその企業で働く従業員に支払われるため、また減価償却費はキャッシュフローの一部として内部に還流されるため、付加価値を構成します。

 

そもそも利益とは、売上-費用=利益であらわされるように、手元に残った儲けを指します。

利益でも参考にはなりそうですが、生産性を判断するために知りたいのは「手元に利益として使える分がいくら残ったか」ではなく「その企業自体でどのくらいの価値を算出したか(売上のうち外部に支払う必要のある分以外はいくらか)」であるので、外部に支払った費用とはみなさない人件費と減価償却費は、足し戻す必要があるわけです。

 

利益・キャッシュフロー⇒収益性を判断。企業としていくら稼ぎ、活用できるか

付加価値額⇒生産性を判断。企業外部から調達したのではない産出額はいくらか

 

これをもう一度とらえなおしてみましょう。

付加価値が増大したということは、売上が増大したり、あるいは外部に対する支払いが減少してその分自社の価値割合が増大したということになります。単純には営業利益として表れるでしょうし、もしくは利益ではなく従業員や設備の拡充として表れるかもしれません。

 

逆に、付加価値が減少したということは、企業の生み出した価値全体が減少したということになります。この時、もし見かけ上営業利益が出ていたとしても、実は人件費を減らしたり設備を売却したことによることもあり得ます。

 

このように、営業利益だけでは企業の手元に残った儲けとなりますが、企業がどのくらいの価値を算出しているかという生産性を判断するためには、付加価値額を利用します。